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書評

いますぐはじめる!やさしい感染管理

[監修]小宮山彌太郎 [著]山口千緒里


正しい感染管理を日常臨床に取り入れるための実践書

 古くは、レーシック手術、インプラント治療、そして歯科用タービンハンドピース使い回し問題などで、感染管理は歯科医療従事者のみならず、患者および国民にとって関心の高いものになっている。そのため、感染管理に関する書籍も最近は多数出版されている。この度、日本におけるインプラント治療のパイオニアである小宮山彌太郎先生の監修のもと、ブローネマルク・オッセオインテグレイション・センターにて、20年以上の長きにわたってインプラント治療に携わってきた山口千緒里さんによる感染管理の本が出版された。つまり、手術レベルでの教育を受け、それを日々実践されている第一人者による感染管理の本ということになる。

 新たな知見に出会ったとき、われわれ臨床に携わる者は、まず知るということから始め、それを十分に理解して習得し、日常臨床で実践していくことで、初めてそれが活かされたことになる。

 ところが、時として知識は得ることができたとしても、それを実際の臨床に活かせず、そのままになってしまうことがある。多くの場合、それははじめの一歩を踏み出すことがたいへんだからである。そして、たとえ踏み出したとしても、小さな疑問や問題にぶつかり、それを継続していくことが困難となってしまう場合が多々ある。まして、感染管理は誰か一人が知っていればよいとか、できればよいというものではなく、スタッフ全員が知識を共有し、システムとして取り組むことで、初めて成り立つものである。

 書名の『いますぐはじめる! やさしい感染管理』という言葉が示すとおり、一人でも多くの読者にやさしく正しい知識を伝え、それをすぐに実践するための工夫が随所に込められた、まさに実践の書といえる。

 具体的には、「洗浄とは?」「消毒とは?」「滅菌とは?」というような基礎的な知識に始まり、ハンドピースを含めた器具、機材や薬品の正しい取り扱い方、そして、一般臨床、インプラント治療、訪問診療において、われわれが抱きやすい疑問を語りかけてくれるように投げかけ、それに答え、さらにアドバイスをするという構成をとっている。平易な言葉を巧みに用い、そのうえ、図表や写真も多いために、知識のあるなしにかかわらず、たいへんわかりやすく、すぐに役立つものとなっているのが本書の特徴といえる。そして本書は一読して終わるというものではなく、必要なときに必要なところを見返すことができる工夫がうれしい。

 歯科も医療の一環である以上(これは当たり前のことでなければならないのであるが)、一人でも多くの歯科医療従事者が本書を手もとにおき、その内容を一つでも多く実践されることは、個々のクリニックのみならず、ひいては日本の歯科界があらゆる人たちから高く評価される一助になると確信している。

文・馬見塚賢一郎
東京都開業

いますぐはじめる!やさしい感染管理

いますぐはじめる!
やさしい感染管理

[監修]小宮山彌太郎 [著]山口千緒里

B5判変型・104頁・オールカラー
定価(本体3,500円+税)


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