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書評

臨床現場で求められるコミュニケーションのヒント

[執筆]山岸弘子


お年寄りの耳元で、大きな声で話しかけていませんか?

 本書を手にしたときにまず感じたことは、“歯科の本っぽくないなあ”ということである。歯科専門書という堅苦しさがなく、さらに新書判という手になじみやすい書籍の大きさにである。また、普段の話し言葉のごとく流れるような語調で書かれ、内容が頭にすーっと入ってくる読みやすさがある。そのような親しみやすさも相まって、電車やカフェでも周りを気にせず集中して読める歯科専門書であろう。

 新人の歯科衛生士や歯科医師がまず苦労するのは、歯科医院でのコミュニケーションである。同世代の患者さんとは、話題が共通なこともあり話しやすい。ところが、高齢者や子どもとなると、多少壁を作ってしまうことがある。

 少子高齢社会のいま、歯科医院には多くの高齢者が来院し、子どもは少なくなってきている。一方で、保護者に過保護に育てられている子どもが増えてきている事実もある。

 本書では、そのような高齢者と子どもや保護者という二極を中心に、歯科医院でのコミュニケーションのとり方について解説している。

 本書を読み進めていくと、普段の臨床で高齢者や子どもの特徴を理解していなかった自分に気がつく。たとえば、耳が遠く、こちらの話が伝わりにくい高齢の患者さんに対し、つい耳元で大きな声で話しかけてしまっていた。それは、単にラジオのボリュームを上げるように、音量を上げれば済むという問題ではないという。このあたりはさすがNHK学園で長年講師をされてきた、山岸氏ならではの洞察である。本書には高齢者に伝わりやすいコミュニケ―ションのヒントが綴られている。

 また、子どもに対するコミュニケーションとなると、また別の視点が必要になる。子どもは専門的な言葉や説明では理解や納得を得られない。ある意味、正直である。保護者を含めた、より誠意のある対応が必要であろう。また、お母さん同士のネットワークは半端ではなく、口コミで歯科医院の評判が良きも悪しきも広がってしまう。

 本書は、まず院長に一読していただき、一緒に診療する歯科衛生士やコ・デンタルにも読んでいただくことをお勧めする。決してスタッフ研修のためなどと肩ひじを張らないでほしい。臨床に携わっているスタッフであれば、本書を読んだ後に“気づき”が必ず見つかるはずである。院内でのコミュニケーション力をアップさせるヒントが盛りだくさんの書籍である。

文・亀田行雄
埼玉県・医療法人D&H かめだ歯科医院
[デンタルダイヤモンド 2017年5月号掲載]

臨床現場で求められるコミュニケーションのヒント

臨床現場で求められるコミュニケーションのヒント

[執筆]山岸弘子

新書判 ・ 176頁
定価(本体1,200円+税)


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